ザパンと打ち付ける波が冷たくて、あっという間に沈んだ夕日が微かな光さえも消し去って。



遥くんの顔が見えなくて、何でかわからないけど不安で、怖くて。



涙が出そうだった。だけど、




「依良?」


いきなり叫んだ私に戸惑う遥くんの声が聞こえた。



その瞬間私はすごく安心して、水が跳ねるのなんてお構いなしに遥くんの元へと駆け寄った。





「…遥くんっ、」

駆け寄った私を受け止めてくれた遥くん。

潮の香りに交ざって遥くんの匂いが鼻を掠めた。



「……っ」


遥くんだ。遥くんだ。遥くんだ。

私の頭をポンポンと叩いて落ち着かせようとしてくれてる遥くんのジャケットにしがみついた。



普段ならこんな大胆な事出来ないけど、今は恥ずかしいとかそんな事よりも、遥くんの近くに居たかったんだ。