「依良、これ食べてごらん」
私がチョコレートに夢中になっていると遥くんが差し出したチョコレート。
初めに私が食べたチョコレートと同じ形…。
「さっき食べたよ?」
不思議に思い遥くんにそう言うけど遥くんは「いいから食べてごらん」と言うだけ。
そんな遥くんが不思議だったけど私はそのチョコレートを食べた。
「…………っ!!」
食べた、けれどその瞬間に口に広がる苦味。
苦いものと辛いものが滅法苦手な私は思わず涙目で遥くんを見上げた。
「……遥くん、これなに!?」
何とかチョコレートを食べきり問い詰めると
「ブラックチョコレートだよ」
とあっけらかんと言われた。
「ブラック、チョコレート…?」
なんだそのいかにも苦そうな名前は。
「カカオの量が多いんだよ、依良に食べさせたらどうなるかなって思って」
そう言って笑う遥くんが恨めしい、けど笑った顔も格好いい…。
「遥くんの意地悪…」
ポツリとそう言えば「ごめん、ごめん。ほら、あっち行ってみよう」とかるーい感じで返された。
まだ口の中は苦いけど、こんな時間も楽しいなと思った。



