「リビングでイチャつくなよ」
二人だけの空間に響く声。
目をパッと開けてリビングのこれまた豪華な扉を開けて入ってくる人物を見た。
「…絢人っ、お、おかえり」
「おかえり」
「ただいま、依良」
軽い足取りで微笑みながらこっちに向かってくるのは
滝川 絢人 (タキガワ アヤト)
滝川家の次男で、遥くんの弟で、私のもう一人の幼馴染み。
私と同い年の17歳。
「ん?なにこれ」
「あっ、クッキーだよ、作ってきたの」
絢人が手に取ったのは私が遥くんに作ってきたクッキー。
「……へえ、」
絢人は私のクッキーをマジマジと見ると、
「あっ…!」
そのままポイッと口に放り込んだ。
「にっが、美味しくない」
「遥くんに作ったんだもん、甘さは控えめに決まってるじゃん」
顔を歪めてそんな事を言う絢人に少しだけイラッとする。
甘いものが苦手な遥くんに合わせて糖度を抑えた抹茶のクッキー。
甘いものが好きな絢人には苦く感じたんだろう。
と言っても苦いって言うほど苦くはないはずだけど。