「依良の気持ちはわからない。でも、何も言わないで他の誰かと結婚なんて絶対嫌だって思った」


「……遅すぎでしょ」


「絢人の言う通りだよ。でも………依良が誰に奪われそうになって初めてこのままでたまるかって思っちゃったんだよね」


「……………」


「俺が依良に好きだって言った所で依良を困らせるか二度と笑ってくれないかなんだろうけど、何も言わずに皐月さんと結婚して、依良が知らない男の隣で笑ってるよりも好きだって伝えて二度と俺に笑ってくれない方がマシだって思ったんだ」




そう言った兄貴の瞳は真剣で。
息を飲む程その表情は格好良い。





「兄貴、」


「なに?」


「もしも、もしもだけど兄貴の想いを依良が受け止めたらさ」





俺は依良が一番大切で、依良の隣に立つことを認めた人は兄貴だけ。



その辺の男は論外だし柏木はいい奴だけど。



認めた人は兄貴だけ。



俺でもダメ。



依良が恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに笑う相手。

依良が一番幸せを感じる場所。



それは兄貴だから。

兄貴の隣だから。



誰よりも痛いくらいそれを思いしってるから。





だからこんな事言うだけ野暮かもしれないけど。





「依良の事、幸せにしてよ」


「…………っ」


「じゃないと俺が許さないから。兄貴でも」



冗談なんかじゃない。本気の目で兄貴を見れば兄貴も本気の目で俺を見る。




「もしもそうなった時は幸せにするよ。全力で。何があっても」