インナモラート 【完】

それが出来ないことはわかってはいるけれど。


そうすれば兄貴はすぐに依良のところに行けるのに。

依良が泣かずに済んだのに。


そう思わずにはいられない。




「まあ会社の事はいいとして…、栗原皐月とも話したんでしょ?」

「話してるよ」

「納得はしてんの?」


俺がそう聞くと兄貴はわかりやすく困った様に苦笑いを浮かべた。



「その様子じゃ手こずってるんだ?」

「どちらかと言うとそっちの方が」


それは予想していたけど、兄貴の表情を見る限りかなり手こずってるんだろうな。




「皐月さんは納得出来ないって言ってたけど納得してもらわないと俺としても何も出来ないからね」

「でもあっちのじいさんとか親が兄貴の出した条件を呑めば栗原皐月の意思とか関係ないでしょ」



いくら栗原皐月本人が婚約解消を嫌がったって、栗原がさっき兄貴が言っていた条件を呑めば栗原皐月本人の意思なんて関係なく今回の婚約の話はなくなる。


だから栗原皐月と話をするなんてしなくてもいいのに。




「俺の勝手でこうなったんだから、ちゃんとそこはしないと」



そう言う兄貴の瞳は真剣で。


優しすぎるよと、甘すぎるんだよと、言いたいけどきっとそういうところが兄貴の良いところで。