「それで話はつきそうなの?」

「……あと少しってとこかな」

「やっぱすぐには向こうも頷いてはくれないか」

「勝手を言ってるのはこっちだし、今の栗原は滝川となんとしてでも手を組みたいだろうし」

「じいさん達が仲が良いからあまり無理な事は出来ないし?」

「そうだね」


困った様に笑う兄貴はネクタイを片手で緩めながら壁に寄り掛かった。

疲れからなのかその姿には儚さがあって弟の俺ですら見惚れてしまう。


この人には勝てないなと、思う。





「まあでも、話は纏まってはきてるよ。あっちが欲しいのは会社を立て直す為のチャンス。それと滝川とパートナーだっていう保証」

「どうすんの?」

「共同事業は予定通り進める。そうすれば栗原は利益が出るし、滝川にも利益が出るからね。後は滝川が栗原に融資する。まあ、事実上寄付って事になるけどね」

「栗原の立て直しの手助けをするって事ね」





そもそも共同事業自体が栗原の立て直しの為の手助けなんだ。


あまり表立ってはいないが業界内では栗原の経営難の話は広まりつつあって。

そんな所と共同事業をするとなると滝川のブランドも落ちる可能性はある。

まあ滝川程の家になればそんなの関係ないくらいなんだけど、万が一ってものがある。



だけどほぼ100%の確率で滝川と共同事業をすれば成功する。
利益が出る。それどころか滝川と手を組めば栗原の地位は更に上がる。


それを狙っての今回の話。

栗原にとっては殆どノーリスクって訳だ。




滝川が今回の話を受けたのは昔から栗原と親しいって事と滝川としても利益が出るからだ。