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午前1時。
何となく眠れずにいた俺は夜食でも食べようかと部屋を出た。
午前1時と言っても警備や明日の仕込みとか何やらで起きている人はこの家にはたくさんいる。
夜食を食べたいと言えばすぐに作ってくれるだろう。
そう思い間接照明だけがついた廊下を歩いていると…
「あ、おかえり」
今帰宅したのだろう、スーツを着たままの兄貴が向こうから歩いてくるのが見えた。
「ただいま」
疲れているんだろう、目の下には隈が見えている。
「今帰ってきたの?」
「まあね」
「今日も栗原のとこに?」
「そうだよ」
「兄貴体調は大丈夫なわけ?」
「…大丈夫だよ。栗原さんの所に行った後に仕事してたからこの時間になっただけ」
そう言いながら微笑んではいるけどやっぱりその表情は疲れを隠しきれていない。
それもそうだ。
婚約を破棄にすると決めてからは栗原と話をつける為に寝る間も惜しんで働いている。