それからもうすぐ日が暮れるからと柏木くんに言われて喫茶店を出る。
「今日は送っていけないけど気を付けてね」
「ありがとう。……また学校でね」
と言葉を交わし、最後に
「ありがとう」
と言われて。
柏木くんはどこまでも優しかった。
ズキズキと痛む心を抑えながら一人の帰り道を歩く。
決めた事だし後悔はないけれど心が痛まなかった訳じゃない。
柏木くんの気持ちに答えられない事が凄く苦しい。
柏木くんに悲しい顔をさせてしまった事が辛い。
だけど私にはあの答え以外出すことは出来なくて。
どうしようもない事だとわかってはいるけどやっぱり苦しい。
遥くんとの恋が叶わないとわかった時とも、
自分が子どもにしか見られていないと思い知らされた時とも、
今までのどんな時とも違う初めて経験する心の痛み。
その痛みを、柏木くんの想いを無駄にしない為に。
私は出した答えに真っ直ぐ進んで行くんだ。