インナモラート 【完】


柏木くんは暫くの間目を伏せて何も喋ることはなかったけど、少しして徐に伏せていた目を上げると



「もうその思いは変わらない?」



と真っ直ぐに私を見つめながら問い掛けた。



“その思いは変わらない?”

少し前の私なら頷くことに躊躇っていたかもしれない。

でも私はもう後ろには退けない。

柏木くんがくれた想いも、背負うから。



「変わらないよ」


だから私も真っ直ぐに柏木くんを見ながらそう言った。



それを聞いた柏木くんは悲しそうに、切な気に一度唇を噛み締めた後、優しく笑った。




「そっか…。うん。わかった」


「柏木くん…」


「花咲がそう決めたなら、俺はもう諦めるしかないね」


「ごめんなさい…」


「ごめんなんて言わないで。真剣に考えてくれた結果でしょ?」


「うん…たくさん迷って出した答え」


「ならその想いを俺は真剣に受け止める。ちゃんと答えを出してくれてありがとう」


「…………っ」


「たくさん困らせてごめん」



“ごめん”なんて、柏木くんの方にこそ言って欲しくない。




「ありがとう、柏木くん。私の事好きになってくれて、伝えてくれて、…ありがとうっ…」



柏木くんの気持ちが嬉しくなかった訳じゃないから。



ありがとうと言った私に柏木くんは泣きそうに笑った。




「俺の方こそありがとう」と──────。