「たくさん迷った。柏木くんと付き合ったら好きな人を忘れられるかなって。少しは楽になるかなって。柏木くんを好きになれるかなって。だけど、それはきっとない」
「………っ」
「私はどうやっても好きな人を…、遥くんを忘れられない。柏木くんと付き合っても絶対に忘れられない」
「そんなのわからないでしょ?」
「……………」
確かに、未来のことも人の気持ちの変化もどうなるかなんてわからない。
世の中には好きな人がいても、違う人と付き合ったら好きな人を忘れて違う人を好きになる事だってあるってわかってる。
だけど私はどうしたってそうなるとは思えない。
遥くんへの気持ちが自然と消えるなんてありえない。
自分を潰す様にして柏木くんと付き合っても楽になるなんてありえない。
「私は遥くんの事が好きなの。きっと、ずっと、好きなの」
「…………っ」
「自分に嘘は吐きたくない」
「…………、」
「それにそんな気持ちのまま柏木くんと付き合っても、お互いに苦しくなるだけ」
ただただ柏木くんへの罪悪感しか残らない。
柏木くんが優しくしてくれても、大切にしてくれても、そうされればされるだけ苦しくなるに決まってる。
「私は遥くんへの気持ちを大切にしたい。………ケジメだってつけたい…」
「……………」
「これが私の出した答え。…柏木くんとは付き合えない」
そう言った瞬間ゆっくりと目を伏せた柏木くんに思わず目を反らしたくなった。
あまりにも柏木くんが悲しそうで辛そうだったから。
だけど反らしたらダメなんだ。
それは柏木くんが私にくれた気持ちを無下にするのと同じだから。



