「依良…」
「なに?」
風が吹き止み、絢人の表情が見れるようになったと思えば絢人は真剣な表情をしていて。
笑ってくれてたと思ったのは勘違いだったのかと思えば今度はニヤリと笑いながらおもむろに制服のポケットからスマホを取り出して私の方へと向けるから何だろうと首を傾げれば
「さっきの、もう一回言って。可愛い」
「…………っ、絢人っ!…」
と言いながら動画を撮る準備なんてしているからその行動に大きな声を上げた。
「人が真剣に言ったのにっ……」
ズンズンと怒りながら絢人の方へ歩いて行くけど絢人は笑みを絶やさずにいる。
「真剣だから可愛いんじゃん。ね、もう一回言って?」
私じゃなければドキドキしてしまう様な甘い笑みまで浮かべてお願いするように首を傾げる絢人は悔しいくらい可愛い。
というか母性本能を擽られる。
だけどそんな甘い私ではない。
せっかく恥ずかしいのを我慢して素直な気持ちを言ったのに…。
茶化すなんて…!
「……もうっ!知らないから!」
「あっ、待てよ。どこ行くの?」
「教室だよ!」
「俺も戻るし。一緒にいこ」
走り出しそうな私の隣にスッと来て言う絢人。
その絢人をジッと見る私。
「………………」
「なに?」
「何でもない。早く行こう」
茶化したのは許せないけど、ああやって茶化したりからかう事でいつの間にかいつもの私になってる。
気持ちが軽くなったのは悩みが解決したっていうのもあるけど、さっきののおかげもある。
何だかんだ絢人には感謝しかないんだ。



