「さて、と。そろそろ教室戻るか」
「そうだね、もう少しでお昼休み終わっちゃうし」
「よし、戻るよ」
そう言って柵から背を離し、屋上の扉の方へ歩く絢人を
「絢人っ」
呼び止める。
どうしてももう一度言いたかったから。
「ありがとう、話聞いてくれて…遥くんの事教えてくれて」
「………」
「絢人がいてくれて良かった」
遥くんに似ている黒い瞳で私を真っ直ぐ見つめる本人を目の前にそんな事を言うのは恥ずかしいけど、絢人がいなければ押し潰されてた私がいた。
迷ったままだった私がいた。
今日だけじゃなくてどんな時も私のそばにいて話を聞いてくれて私を理解してくれた。
狡い私も弱い私もどんな私でも受け入れてくれた。
全てさらけ出せるのは絢人だから。
「絢人のこと信頼してる。いつもありがとう」
「…………っ」
そう言った瞬間はタイミング悪く風が吹いて靡いた茶色の髪の毛に邪魔され、絢人の表情は見えなかったけど、笑ってくれてたんじゃないかって思う。



