「仮に兄貴に好きな人がいて、その人を諦めて自分の気持ちを捨てて家の為に会社の為に婚約する兄貴も兄貴で馬鹿だと思うけど、断る事も難しいんだよ」
「………会社に損になるから?」
「そうだね。下手したら共同事業の話がなくなる。そうすれば滝川に損失は出ないけど、あったはずの莫大な利益はなくなる」
「………!」
「滝川と栗原は仲が良かったから、断ればそこに亀裂が入る事にもなるかもしれない。それに栗原は最近経営難に陥っていてね、滝川との婚約は何がなんでも離したくないだろうし」
「……っ、そんな…利益とか…会社の為とか…それで遥くんの将来を…」
「滝川の跡継ぎであり長男だからね。仕方ないと言えば仕方ない」
「…………っ」
絢人の話を聞いて胸が押し潰されそうになる。
会社とか利益とか損失とか…そんなもので遥くんの将来を決めて…。
遥くんは、遥くんの気持ちはどうなるの?
さよならをした日の遥くんを思い出す。
“皐月さんを愛してるでしょ?”
“遥くんは…それでいいの…?”
“遥くんは間違ってるっ……”
私が放った言葉の数々がどれ程遥くんを苦しめたか。
何もわからないのに、責める様な言葉だけをぶつけた。
遥くんの苦しみをわかろうともしないで、心無い言葉ばかりをぶつけた。
遥くんの悲しそうな辛そうな、泣きそうな顔ばかり思い出される。
“それくらいの自由、あっていいでしょ?”
………自惚れるわけじゃないけど、遥くんは私に助けを求めていたのかもしれない。
私には、あんな事言って欲しくなかったかもしれない。
私は遥くんが好きなのに、自分の気持ちとか皐月さんの気持ちばかり優先した。
一番大好きな人の気持ちを蔑ろにした。
今更後悔したって遅いのに…今更その事に気づくなんて…。
私はどこまで無神経でいれば、どこまで情けなくなれば済むのだろう。



