インナモラート 【完】



「知ってる?」と言われて気にならないわけはないから頷くと絢人は


「兄貴ね、最近すっごい忙しそうにしてる」


と当たり前の事を言った。



「いつもの事じゃん」


滝川の跡取りである遥くんが忙しいのは当たり前。

何言ってるの、冷ややかに絢人を見るけど絢人は全然気にしていないようで尚も話を続ける。




「いつもの比じゃないんだって。ここ数日かな?朝から晩までずーっと忙しそうにしてんの」


「……………」


「何でだと思う?」


「なんでって…」


お仕事が立て込んでるってこと以外に何かあるの?


だけどその理由なら絢人はわざわざそんな事言わないだろう。

でもそれ以外には思い浮かばない。



「何でなの?」



私の問い掛けに絢人は待ってましたと言わんばかりに笑みを浮かべた。








「栗原皐月との婚約を破棄にしようとしてるからだよ」





そう言った絢人の言葉が、一瞬のうちに何度も頭の中で繰り返された。