「聞いたよ…?」
私は遥くんの口から聞いた。
好きな人はいないから婚約を受け入れたって…確かに遥くんはそう言った…。
そう絢人に伝えるけど絢人は首を横に振った。
「ううん、依良は聞いてない」
「…………」
「兄貴の本心を…兄貴の口から聞いてない」
「本心…?」
「そう」
遥くんの本心なんて……、あのさよならをした日に言っていた事じゃないの?
それなのに絢人はそれは違うと言うの?
「わけ…わかんない」
そう呟くと絢人はフッと笑った。
「兄貴の言動ははいつもわかんないでしょ」
「…………、」
絢人の言う通り遥くんの言動はよくわからない。
この前だって、私なんか気にしないで帰れば良かったのにわざわざ車から降りて、あんな事を言って…………。
遥くんの心がわからないから、嬉しい時も悲しい時もいつもその行動や言葉の意味を理解する事が出来ない。
いつも私に優しく触れてくれる遥くんにドキドキしても嬉しくても、その行動の意味がわからないから…わかってるのはその行動に恋愛感情がない事だけだった。
もしも、あの時の遥くんの言葉が本心ではないなら遥くんの本心を知りたい。
だけど遥くんの本心を知るのは物凄く怖い。
「…………っ」
柵の手すりをぎゅっと握った。
「まあ兄貴も色々悩んでるんだよ」
そんな私を見て絢人は「知ってる?」と話を切り出した。



