「そんなのっ…」


私は、おかしいと思う。



それに柏木くんにも失礼な事だと思う。

私はきっと遥くんをずっとずっと好きでいると思うから。

柏木くんを好きにはなれないと思うから…。




例え僅かな可能性でいつか他に好きな人が出来たとして誰かと付き合う事になったとしてもそれは自然と育まれた感情で…。

遥くんを好きって感情も時間をかけて自然と無くなっていくものだと思うんだ。


だからまだ柏木くんを好きと思えないのに、遥くんを忘れてないのに付き合うって事はおかしい。




それに付き合ったからと言って柏木くんを好きにはなれないと思う。

好きではない人と付き合っているうちに遥くんを忘れていくなんてありえない。


そういう始まりもあるんだと理解はしているけれど。

私の遥くんへの感情はそれには当てはまらない。





だからそんなのはおかしいと、柏木くんに伝えようとしたけれど、



「俺は…いいんだ。花咲に好きな人がいても…、いつか俺を好きになってもらえる様に努力するから…」


「……でも、」


「一度だけでいい。付き合ってほしい。好きになってもらえなかった時はキッパリ振ってくれていいから」


「柏木くん…」


「花咲は辛くないの?」


「っえ…?」


「花咲だって辛いでしょ?叶わない相手をずっと想ってるなんて」


「……それはっ…、」


「大切にするから…傷つける様な事は絶対にしない。幸せにする」


「…………っ」


「今すぐに返事が欲しいわけじゃない。ゆっくり考えて決めていいから」


「………」


「真剣に考えて欲しい」




あまりにも柏木くんが苦しそうに言うから…私は思わず頷いてしまった。



「ありがとう…返事はいつでもいいから」



頷いた私に優しく微笑んだ柏木くんは


「先に教室戻ってるね」


と言い残し中庭を後にした。