「…………っどうして、……」


言った瞬間にこんな言い方じゃ“はい、そうです”と言っているようなもんじゃないかと心配になったけれど



「昨日の様子見てたら多分誰でもわかるよ」


と言われてその心配も無駄になった。



「でも、今ので確信した」

そう言った柏木くんにはもう隠しても何の意味もないからそれを認める。



「……うん、昨日の…絢人のお兄さんが私の好きな人」


「そっか」


「うん…。失恋してるけどね」


自嘲しながら言えば柏木くんは辛そうに顔を歪める。



「俺の…入り込む隙はある?」


「……え?」


「花咲は…少しでも俺の事良いって想ってくれてる?」


「柏木くん…?」


「もしも、俺の事を良いって想ってくれてたら…、付き合ってほしい」


「え……、」



柏木くんの言葉に戸惑いを隠せない。



好きって言ってくれたって事は付き合ってという言葉を言われない可能性の方が低いとはわかってるけど私には好きな人がいて、それを柏木くんも知っているのにそんな事を言う柏木くんの意図がよくわからなかった。


だって


「私は今も遥くんのことが…」


「それはわかってる。だけど…どうしても好きなんだ」


「…………っ」


「彼を好きなままでいい。いつか絶対に振り向かすから…だから…お願い」


「…………っ」


「少しでも俺に可能性があるなら、チャンスをください」



目の前の柏木くんは必死で…声も悲痛な叫びにすら聞こえて。


いつも爽やかなはずの表情だって苦しそうに切なげに歪んでいる。



柏木くんの気持ちに答えられない事が苦しい。

だけど、そんな事いいのだろうか。

遥くんを好きなまま柏木くんと付き合うなんておかしくはないんだろうか。