「よぉぉぉーりぃぃぃー!」



教室に入った途端、凄い勢いで私に抱きついたのは栞。


「うわぁっ…」


いきなり抱きついてきた栞によろけた私を後ろから支えたのは絢人。


「ビックリしたー…、おはよう栞。ありがと絢人」


「おはよう!もう体調は大丈夫なのっ?」


「大丈夫。心配かけてごめんね」


「昨日は依良がいなくて寂しかったよ…。私の癒しぃぃー」


「癒しって…」


「依良は癒しだよ!可愛いし可愛いし可愛いし!目の保養!ねっ、絢人くん」



大きな瞳をキラキラにして栞がそう問い掛けたのは私の後ろに未だにいる絢人。




「わかってるね栞ちゃん。依良以上に可愛いものなんてないよね?」


「うん、ないっ!見た目も中身も、少しお馬鹿なところもぜーんぶ可愛いっ!」


「まあ俺のだからね」


「何言ってんの、私のだよ」



恥ずかしい言い合いをニコニコと話す二人に私は恥ずかしいのと呆れるのとでいっぱいいっぱいだ。





全然栞の方が全てにおいて可愛いと思うんだけどなあ。

それになんか馬鹿とか聞こえたし…。



「俺の方がずっと依良といるんだけど?」


「時間じゃなくて濃さだよ、大切なのは」



未だに言い合いをしている二人を横目に、私は自分の席へと向かった。