なんだ、と思っていると
「俺が連れていく」
と上から声がして上を見上げると絢人の顔があった。
声からして絢人である事はわかっていたけど。
「依良をよろしくね」
「「「キャー!!!」」」
そう言った栞の声を掻き消す程の悲鳴が教室内外に響き渡り、誰かが「王子様みたい」と言った事で私は今の自分の状態が把握できた。
私は今絢人に、お姫様だっこをされている。
だからこんなに悲鳴が響き渡ったんだ。
それを理解すると恥ずかしくなり「下ろして」と絢人にお願いするけれどあっさりと「ダメ」と言われて私はお姫様だっこをされたまま教室を出た。
廊下でも女子達から熱い視線を向けられている絢人は涼しげな表情で歩いていく。
恥ずかしいし、心地悪いよ。と思いながらもそれ以上の事は頭がボーッとして考えられない。
頭を絢人の胸に預けたまま、保健室に着くまで目を閉じていた。