「好きなら好きって言えばいいじゃん」
「そんな事出来るはずないだろう」
「どうして」とは言えなかった。
その気持ちを一番よくわかってるのは紛れもなくこの俺だと思うから。
だけどただの臆病者の俺とは違って滝川という重荷を背負ってるこの男は俺の何倍も悩み、苦しみ、悲しみ、最後には諦めるんだろう。
誰よりも気遣いが出来て、滝川の家に相応しく社交的。
優しくて、堂々とした佇まいはまるで英国紳士。
だけど、どうしてかな。
仕事に関しても普段の生活に関しても完璧で、変化に鋭いのに…
それが色恋沙汰になるとめっきり鈍くなるのは。
自分に向けられる好意に気づかない。
兄貴も依良に負けないくらいの鈍感野郎だよ、まったく。



