「何度聞いても遥くんは結婚するって言ったの」



だったら私が出来ることは幼馴染みとして遥くんの結婚を祝福する事。

遠くから遥くんの幸せを願う事。


それは間違ってないよね…?








「遥くんは…幸せになれるよね?」



絢人の顔が辛そうに歪む理由は一体何なんだろう。







「遥くんに好きな人がいないなら、皐月さんを好きになってくれるよね?」



こんな言い方、皐月さんに失礼だとわかっていても、それが本心だ。


皐月さんを好きになって、幸せになって遥くん。







「好きになるよね?」



こんな事聞いて何になるって言うんだ。


でも、安心したい。諦めたい。






絢人の表情が苦痛に歪み、遥くんより少し鋭い意思が強そうな、だけど遥くんによく似ている綺麗な目を伏せた。

女の子の様に長い睫毛が顔に影を作り、絢人の辛そうな表情が更に際立つ。



そしてゆっくりとした動作で伏せた目を私に向けた絢人はいつもの甘い笑みではなく、悲しそうに笑った。






「兄貴は皐月さんを好きになるよ」