私が遥くんの隣に座るとそのまま引き寄せるように私の腰に手を回して「依良」と私の名前を呼ぶ。


近い遥くんにドキドキと心臓がうるさくなるけれど他の誰とも比べ物にならないくらいの安心感もある。





「依良が居ると疲れも取れていくな」

「お仕事忙しいの?」

「まあ…最近はちょっと忙しかったかな、でもやっと一段落ついたよ」

「そっか…」



そう言った遥くんの表情には疲れの色も見える。




大企業の跡取り息子。

まだ若いのにその重責を背負い、膨大なお仕事をこなしながら大学にまで通ってる遥くん。

疲れない方がおかいしいんだ。




「無理はしないでね」

「大丈夫だよ、依良がこうして癒してくれるから」

「………っ」


私の髪を優しく撫でる遥くんに顔が真っ赤になる。



髪を撫でるから顔も近くなるし、何よりそのまま手を降ろしてきて頬を撫でるんだもん。



遥くんの温かい手の温もりに、頬が染まる。


けれどそれと同時にギュウッと胸が痛くなる。





これが恋人同士ならどんなに良いだろうって。