「依良、何かあったの?」
ママの声はとても優しくて、また涙が出てきそうで必死にそれを堪えた。
だけど昨日の事を話すのはまだ躊躇いがある。
恋の話を親にする事の恥ずかしさもあるし、まだ正式に決まってない為発表していない遥くんの婚約の話をする訳にもいかない。
「…………っ」
「私には言えない事なのね」
微笑んだママは全てわかっているかの様だった。
「言えない事なら言わなくていいのよ、依良」
ママの言葉に俯いていた顔を上げてしゃがんだママと目線を合わせる。
「依良が話せるようになったら話せばいい。そうしたら私は真剣に話を聞くし、何か出来る事があるなら何だってやるわ。依良がヘコんで元気がなかったら美味しいご飯を作って元気付ける」
悪戯に笑ったママはそう言って私の頭を撫でてくれた。
そして真剣な顔をして私の事を叱ってくれた。
「だけどね、依良。私はそんなに甘くはないのよ」
「………」
「依良にとったらすごく辛い事があったのかもしれない。だけど泣いたって何も変わらないの。別に泣くなって言ってる訳じゃない。いくらでも泣いていい。だけどちゃんとしなくちゃいけない事はちゃんとしないと」
「……ちゃんと、」
「学校、ずる休みするつもり?」
「…………こんな日くらい、」
「こんな日は学校なんて行きたくないのもわかるけど、それとこれとは別よ。そんな事してたらまた明日も学校行かないってなるわよ」
「………っ」
「ちゃんと進まないと、強くならないと」
「…………うん」
まるでママはエスパーの様に私の心を読んで私に必要な言葉をくれる。



