インナモラート 【完】






「遥くん、今までありがとう」




零れた涙を拭って笑顔を見せる。

それなのに遥くんは笑ってくれない。

悲しそうに辛そうに表情を固くする。





どうしてそんな顔するの?


大丈夫だよ、きっと。遥くんは幸せになれるよ。

素敵な女性で優しい皐月さんが遥くんにはいるんだもん。



大丈夫だよ。








「………遥くん、」




一度でいいから、遥くんの瞳に幼馴染みとしてではなく、妹としてでもなく、女の人として映りたかった。







「さようなら」



震えそうな声を何とか止めて、出来るだけ明るく言った。




遥くんはハッとした後、




「さようなら、依良」




悲しそうに笑った。