「するよ、結婚。皐月さんと」
強く瞑った目の縁から、ツーッと涙が流れていくのがわかった。
政略結婚なんておかしい。
だけどそれはきっと滝川家では普通な事なのかもしれない。
まだ皐月さんが遥くんを本気で好きで良かった。
不快な気持ちをさせてしまったのに、遥くんとこれまで通り幼馴染みでいて良いって言ってくれる優しい人だし。
だけど遥くんの気持ちはどうなるの?
遥くんが皐月さんを愛する日がくる事を願う。
遥くんの幸せを願うしか私には出来ない。
だって遥くんの決意はきっと…揺るがない。
私の気持ちは押し込めばいい。
心の奥底に押し込んで、蓋を閉めて、誰にも開けられない鍵をかけて。
二度と表に出さなければいい。
政略結婚だって幸せになる道はある。
遥くんには好きな人がいないんだもん。皐月さんを好きになる可能性はたくさんある。
遠くから、幼馴染みとして遥くんの幸せを願えばいい。
その為には、一つ選択をしなくちゃいけないけど。
「遥くん、私と遥くんはもう今までみたいな関係でいたらダメだと思う」
遥くんから離れるっていう選択を───。



