「俺は…皐月さんを好きになる事はない」
そんな事言わないで。
泣いてしまいそうになる。
期待する事もないけど、悲しさと嬉しさが混ざって涙が出てしまいそうだから。
「絶対に、ない」
遥くんの真剣な声が耳に響いて、遂に我慢していた涙がポロポロと溢れた。
「依良」
「いいっ…」
涙を拭おうとした遥くんの手を振り払った。
今遥くんに触れられたら私はその胸に縋りついてしまうだろうから。
「なれるよっ…、なってよっ…!」
泣きながら叫ぶ様に言う私を遥くんはどう思うのかな。
ボロボロ泣く私をやっぱり子どもだと思うのかな。
「うっ……、」
遥くんが皐月さんを一番に想ってくれないと私はいつまでも遥くんから離れられない。
恋愛としてじゃないとしても、皐月さんより依良の方が大切なんて言う遥くんから離れられない。
遥くんが皐月さんを好きになってくれなくちゃ私はケジメをつけられない。
きっと一生好きでいる。
遥くんをずっとずっとずっとずっと好きでいる。
だけど遥くんから離してもらいたい。
もう優しくしてもらえなくてもいい。
幼馴染みなんて遥くんの中で何の価値もなくなっていい。
一番になんてなれなくていい。
お姫様になんてなれなくていい。
だからせめて遥くんから離してほしい。
遥くんの近くでこんなに辛い思いするのはもう嫌。



