私の言葉に遥くんは僅かに瞳を揺らした。
それに気づいたってその事が何を意味するのかわからないなら意味がないけれど。
「いいよ、それが俺の役目だから」
遥くんの表情はどこまでも悲しそうだった。
「父さんはこの婚約をどうするかは俺が決めればいいって言った。だけど、その前に色々話されたよ」
私を引き寄せる力を強くしながらポツリと言葉を並べる遥くんは弱々しくて、こんな遥くん見たことなくて、私はどうすれば良いのだろう。
「皐月さんの会社の経営状態、滝川家とのこれまでの関係、そこまで話されて最後は俺に決めろって言われても、それはもう俺に選択肢がある様に見せかけただけだよね」
「……………」
皐月さんと遥くんの会社がどんな関係なのかわからないけど、二人が結婚すればお仕事が上手くいったりとかそういう類いの話なんだろうか。
それで遥くんは本意ではない婚約の話を受けたのだろうか。
もし、そうなら…
もし、そうなら…
こんな悲しい事ない。
家の為に結婚する遥くんも、それをわかってて遥くんを本気で好きな皐月さんも。
こんな悲しい事ないよ。
「遥くんっ……」
クシャリ、遥くんの顔が歪んだ。



