「会社の為…?」
「親が決めた婚約者だよ、この婚約はビジネス結婚とでも言うのかな」
嘲笑うかの様に言った遥くんは私の知る遥くんではない。
「だから俺は皐月さんが好きな訳ではないし、皐月さんも俺を好きな訳ではない」
「………っ」
遥くんの言葉に一瞬でも良かったと安心してしまった私は本当に最低な人間だ。
皐月さんを好きじゃないと遥くんが言った時、喜んでしまった自分は心底嫌な人間だと思う。
でも、皐月さんは遥くんを本気で好きだと思うんだ。
皐月さんの態度も、遥くんを見る瞳もそれを物語ってる。
ギリギリと胸が張り裂けそう。
ガラガラと何かが崩れてしまいそう。
遥くんがあまりに悲しそうで、泣いてしまいそう。
「遥くんは…それでいいの…?」
口をついて出たのはそんな言葉。
それを聞いてどうしたいのかなんて自分でもわからないけど出てきた言葉はそれだった。



