「遥くん…、」
ドキン、ドキンと心臓が煩くなっていく。
いつもすぐ近くの遥くんに心臓の音がバレるんじゃないかって心配だけど今日はそれ以上にドキドキと音が聞こえちゃわないか心配だ。
これは……この距離は、
幼馴染みとして普通ではない。
婚約者がいる人とこんな事していたら、
いくら幼馴染みでも許される事じゃない。
皐月さんに嫌な気持ちをさせたい訳じゃない。
「離れて…」
私の言葉に遥くんは驚いた表情をして私を見ると顔をしかめた。
「何で?」
「なんでって……」
そんなの、決まってるじゃないか。
「こういうのは……、近すぎるっていうか、変だよ」
「変?」
「遥くんはこの距離感とかが普通と思ってるかもしれない。小さい頃からそうだったし、遥くんは私を子どもだと思ってるから深くは考えないのかもしれないけど、でもそれは変なんだよ」
遥くんは皆に優しい。距離感だって誰とでも近いと思う。
それは幼馴染みの私も例外ではなくて…
だけど幼馴染みの私には一層そうだったのかもしれない。
私もその距離感にドキドキはしても、普通じゃないとは思わなかった。
でも、それじゃあダメなんだよ。
「幼馴染みだったとしても、こんなにくっつくものじゃない。私達にはこれが普通かもしれないけどそれは人から見たら普通じゃないんだよ」
「……絢人はいいの?」
遥くんの瞳は傷ついている様にも怒っている様にも感じられた。



