私は遥くんの家に来た。
何度も来ても大きなお城のような家。
建物の中は落ち着いた雰囲気ながらも豪華な装飾などが施されていたりいかにもな壺や花瓶が飾られていたりと滝川家の凄さを表している。
「部屋に居ると思うから」
絢人にそう言われて私が来たこと遥くんは知らないのかな?と不安になりながらもコンコン、と遥くんの部屋の扉をノックした。
「どうぞ」
中から聞こえた遥くんの声にドキンと胸が鳴ってゆっくりとドアノブに手をかけてそれを回せば、
「……依良?」
テーブルに置かれたパソコンから顔を上げた遥くんが驚いた表情をして私の名前を呼んだ。
あの日、遥くんの手を振り払って以来、初めて目が合った。
それだけで私の心臓が音を立てる。
「おいで、依良」
嬉しそうに目を細めて微笑んだ遥くんに吸い寄せられる様にして遥くんの部屋へと足を踏み入れた。



