「最近さ、兄貴が依良に避けられてるってへコんでた」
「え、」
学校からの帰り道、静かな車内に絢人の声が響いた。
「別にそう言ってたわけじゃないけど、きっとそう思ってるねあの様子じゃ」
少しだけ笑った絢人に遥くんはどんな様子なんだろうと思った。
「どうしていきなり避け出したわけ?」
「……避けてるわけじゃ…」
背をシートに預けて目線だけ私に向けた絢人に目を反らした。
「避けてるでしょ」
「…………っ」
「やっぱり婚約者のいる人を好きでいるのは苦しい?」
絢人の声は冷たいわけじゃないのに、なぜか冷たく聞こえる。
「…どうしてそんな事言うの?」
私の問いに絢人は顔をクシャッと歪めて笑った。
「俺にも、わかんない」