「すみません、仕事の電話で…」
それから遥くんが戻ってくるまで私と皐月さんの間に会話はなかった。
遥くんはもう出されたお料理を全て食べ終えていて、皐月さんも私と話した後に食べていたから完食していた。
私は皐月さんと話してから手が進まなくて、元から食べるのも遅いからまだビーフストロガノフが残ってしまっていた。
「依良お腹いっぱい?」
それに気づいた遥くんは私の向かいになる椅子に座りそう優しく言ってくれる。
「ねえ遥架さん、部屋行きましょ?」
遥くんの隣に座る皐月さんの声に俯いた。
「まだ依良が食事中ですから」
「でもまだ半分以上残ってるじゃない。別に待ってなくても良いでしょ?早く二人きりになりたいの」
「マナーを考えてもそれは出来ません」
キッパリとそう言った遥くんに皐月さんは不満そうに黙った。
また私皐月さんに迷惑かけてる……。
今すぐに私がここから出ていったら良いんだろうけど、柏さんが作ってくれたお料理を残す事は出来ない。
「遥くん、いいよ」
「大丈夫だから」
「でも……、」
「ゆっくり食べな。お腹いっぱいだったら残しても大丈夫だから、柏もわかってる」
「………ごめんなさい」
「謝る事じゃないだろ?大丈夫だから、無理しないでゆっくり食べていいよ」
ごめんなさい、遥くん皐月さん。
これまでにないくらいに急いで食べた。
遥くんは「詰まるからゆっくり食べな」って言ってくれたけどこの状況でゆっくり食べられる程強い私ではなかった。



