「それは……依良の話?」
冷たく、低く放たれた声はとても遥くんの声とは思えなくて私は思わずハッとした。
「ち、違うっ、あの、えっと……と、友達!友達の話!」
「友達の……そっか」
そう言った遥くんにホッと胸を撫で下ろした。
危うく私の好きな人が遥くんだってバレる所だった。
苦し紛れの嘘も遥くんには通じたようだ……。
「友達がね、好きな人が居るんだけどその人には彼女が……いるの」
私はここぞとばかりに遥くんに話をする。
「本当はね、その人の幸せを願いたいんだけどどうしても苦しいの。本当は自分の事を見てほしいの。
でも絶対にその人は自分の事を見てはくれなくて…、だったらそれでもいいからそばに居たいって思っもやっぱり苦しくて、辛くてっ……。
好きじゃなくなる事も出来なくて……、遥くんだったらこんな時、どうする…?」
「俺だったら……」
遥くんにどんな答えを求めていたのかわからない。
だけどもしも、もしも遥くんが
「その人を諦める」とか
「今は苦しいけどいつか他の人を好きになれる」とか
「一度その人から離れてみる」とかいう事を言っていたら私は無理矢理にでも遥くんから離れたかもしれない。
ずっと好きなままで、だけど幼馴染みの関係を壊して遥くんから離れていたかもしれない。
だけど遥くんは
「俺だったら相手から何としてでも奪う」
そう答えたから。
「相手から絶対に奪えなかったら…?その人は一ミリも自分を見てくれないんだよ?相手の人と結婚しちゃうかもしれないんだよ?」
ここまで言ったら遥くんにバレちゃうかもしれないと思った。
でも遥くんはまるで自分の事とはわかってない。
「例えそうだったとしても、俺は諦められない。諦めるなんて……相手が自分を見てくれないからってそう簡単に出来るもんじゃないでしょ」
遥くんの瞳は冷たく、だけどどこか熱を帯びていた。



