何も言わない私に絢人は軽く笑って「やっぱり」と言った。
「依良の考えてる事は手に取る様にわかるんだよ」
「…………」
「わかりたくない事もわかる」
「絢人…、?」
「普通はさ、俺の返事が気になるもんなんじゃないの?まあそこで兄貴の事考えちゃうとこが依良らしいんだけどさ」
絞り出す様にそう言った絢人はすごく辛そうで苦しそうで、私はただ絢人を見る事しか出来ない。
「そんな風に思うなら兄貴の事なんて好きじゃなくなればいいのに」
「好きじゃなくなるなんて…出来ないよ」
だけどそう言った絢人に否定の言葉は発する事が出来た。
「好きじゃなくなるなんて…無理だよ」
「依良」
また絢人が私の髪の毛を撫でる。
「幼馴染みでいいもん、いいけどっ、好きじゃなくなるなんて無理だよっ」
遥くんを好きじゃなくなれたらどんなに楽だろう。
でも好きじゃなくなるなんて私には一生出来ない。
お婆ちゃんになってもきっと、遥くんが好きだと思う。
小さい頃からずっと、ずっと、遥くんが大好きなんだもん。
好きじゃなくなるなんて無理だ。
「そうだよな」
涙目でそう訴える私に絢人は困った様に笑うと私の髪の毛を撫でたまま、そう言った。
「うん、ごめん依良、ちょっとイライラしてた」
冷たい表情からいつもの優しい表情に戻った絢人は私の頭を引き寄せて涙目だった私を慰める様にポンポンとしてくれた。



