“依良を家に入れるな”なんて言われて兄貴が“はい、わかりました”なんて言う訳ないでしょ。
「それは無理です」
「………っ出来るだけでいいんですよ?絢人くんが呼んだりするのもいいんです、ただ遥架さんと依良さんが二人にならなければ…」
「出来ません」
兄貴の答えが予想外だったのか必死になる栗原皐月を一刀両断する兄貴。
「………なら、部屋に入れる事だけは……ダメですか?」
「俺はあなたと婚約しても依良との関係を変えるつもりはない。
別に変な関係ではなくただの幼馴染みなのであなたが心配する必要はありません」
「…………どうしても、ですか?」
「はい」
女心がわかってないな、と思うけど、兄貴の一番は依良だから仕方ない。
栗原皐月の言うこともわかるけどね。
兄貴は依良との距離を普通だと思ってる。
幼馴染みだから、そう理由をつけて……。
だけど半分は、わかってやってる。
いや……本当の本当は──普通だと言い聞かせてるだけで、全てわかってやってるのかもしれない。
いつも依良に触れて、そばに置いて、
それは幼馴染みとしてではなく、男としてやってる事を────。
「………わかりました、その変わり今日は少し妬いてしまったので甘えてもいいですか?」
兄貴の態度に取りあえずは諦めたのか甘い声でそう言った栗原皐月。
どうせ兄貴にもたれ掛かったりしてるんだろう。
兄貴の部屋に背を向けて下に下りた。
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絢人 SIDE