「依良…」
スッと遥くんの手が私の頬に触れる。
「明日家、おいで」
「え……いいの?」
「いいよ、なんで?」
遥くんの言葉に驚いていると遥くんがクスクスと笑った。
「だって…その、皐月さんと………っ、…」
婚約してるのに、私が家に行ってもいいんだろうか。
遥くんは前みたいに、私と接してくれるんだろうか。
婚約をきっかけに私と遥くんの関係性が変わるんじゃないかって、少しだけ…怖い。
「遥くん……、今まで通りで…居てくれる?」
こんな事言ったら遥くんに迷惑かもしれない。
遥くんから見たらきっとお兄ちゃんの結婚を寂しがる妹の様に見えてるのかもしれない。
だけどどうしても怖くて不安なんだ。
「別に、皐月さんが居たって依良とは何も変わらないよ」
だから遥くんがそう言ってくれて嬉しかったんだ。
だけど嬉しさに浸る時間もなく、また底に落とされる。
「依良は大切な幼馴染みだからね。婚約したからって、変わる必要なんてないよ」
“大切な幼馴染み”
そんな言葉、ひとつも嬉しくない。



