「もちろんだよ、遥くんが言ってくれたらいつでも作るよ!」



また作ってと言われた事が嬉しくて興奮気味に言えばまた遥くんは甘く笑ってくれた。


その笑顔にキュンとなる。


キュンとなる、けど、頭に浮かぶのは皐月さん。





昨日の事、謝らなくちゃ…。


遥くんの言葉に舞い上がるよりも先に、私は言わないといけない事があるのを忘れていた。






「あの…、遥くん…」


「なに?」


「あの……、」


見上げる遥くんの表情は固くて、私を見て悲しそうにしている。




「あの……、」


「……婚約の事?」


「……っ!」


ドキッと心臓が大きく跳ねた。




「あんな感じで、いきなりビックリしたよね」


「あ…、うん…ビックリはしたけど…」


「依良にはまだ言うつもりなかったんだけどさ」


「………っ」


「ごめんね、ビックリさせて」




悲しそうに笑った遥くんに、私まで悲しくなってくる。

どうして悲しそうなの?嬉しい事なんじゃないの?



それに……さっきの遥くんの言葉。




“依良にはまだ言うつもりなかったんだけどさ”



それは、どういう意味?



わかってる、まだ正式に決まった訳じゃなく公に発表もしていないから私なんかに知らせる事じゃないって。

わかってる。




だけど……、私には関係ないと、ハッキリ線を引かれた様で辛い。