「遥くんっ、どうしたの急に…」


「少し依良と話したいなと思って」


「私と?」



背の高い遥くんを見上げるとふと、遥くんの手が伸びてきて私の髪の毛をとかす様に触った。



「………っ」


「少し濡れてる。乾かしてる所だった?」


「うん…、でも殆ど乾ききったから…」


「寒くない?これ着る?」


「えっ…」



聞いたクセに返事を聞く前に遥くんは自分の着ていた上着を私の肩に掛けた。




「…………っ」


ふわりと、肩に掛けられた上着からは遥くんの匂いがして、温かくて…まるで遥くんに抱き締められている様で……。

恥ずかしくもあり嬉しくもあり…すごく愛しい気持ちになった。





「呼び出しといてあれだけど、風邪引くといけないから」



そう言って微笑んだ遥くんはすごく格好良くて、この瞬間だけは婚約してるなんて事忘れてしまうくらいに、好きだなって思った。



だけど好きだなって思うと、婚約してるんだって、思い知らされる。