寄り添う様に座っていた二人の姿。
遥くんの婚約者と堂々と名乗った皐月さん。
思い出したくないのに、頭に浮かんでくる。
「……うっ、…っ…」
暗い静かな部屋に私の嗚咽が響く。
「依良…」
「ごめんね、ごめんね絢人」
泣いていたら絢人に迷惑かけちゃう。
心配かけちゃう。
「大丈夫だから、…っごめんね」
必死に手の甲でゴシゴシと目を擦る私の手を掴んだ絢人は私の手を掴んでいない方の手をそっと、目元に当てる。
そして目の横に流れた涙を優しく拭ってくれた。
「大丈夫だから」
「…………っ」
「そばにいるから、ね?」
布団の中で、ぎゅっと握られた手。
温かくて優しくてまた、涙が出てきた。
「っごめんね、迷惑ばっか…」
「そんな事はいいから。早く寝ちゃいな」
本当に子どもみたいな私。
甘えてばっかりで迷惑かけてばっかり。
「ごめん絢人っ…ありがとうっ」
迷惑かけてばっかりだけど、絢人が居てくれて良かった。
握られた手に、髪を撫でてくれる手に、
絢人の優しさを感じながら眠りに就いた───。



