遥くんの彼女を初めて見た時より、遥くんに子ども扱いされた時より、
今までのどんな時よりも心が痛い。
「………うっ…、っひっく…」
私はどうすればいいんだろう。なんてわかりきってる。
遥くんを諦めるしかない。
笑って“おめでとう”って言うしかない。
わかってるけど…
わかってるけど、
「うぅ…っく、ん…、」
私にはそれが出来そうにない。
「遥くんっ……、」
「依良…」
ゆっくりと慣れた手つきで私の背中を擦ってくれてる絢人の温かさに、涙のストッパーが外れる。
瞳から落ちる透明の液体はボタボタと、服に染みを作っていく。
「絢人っ、……わたし…、私っ…おめでとうも言えなかったっ…、笑って喜んであげないといけないのに…出来ないよっ…う、っ…」
遥くんが愛する人を見つけた事を、遥くんの婚約を、喜ぶのが普通なのに…。
遥くんの幼馴染みとして、喜ぶべきなのに…。
喜べない私は、最低だ。



