「依良…」
苦しそうに切なそうに顔を歪める絢人に、私は気づく事が出来ない。
「うぅ…っ、やだよ…っ」
「依良、」
ボロボロと涙は止まってくれない。
小さい頃から大好きな遥くん。
四つも年が離れてる遥くんはいつだって私の前を歩いていて、大人で…。
誰が見ても格好良くて、優しくて…そんな遥くんがモテない訳もなく、最近は遥くんは彼女を作ってないけど、今までに遥くんの彼女って人を何人か見てきた。
そんな彼女達は皆、可愛くて綺麗で私から見たらとても大人で。
遥くんにお似合いの彼女達が、遥くんに愛されてる彼女達をいつも羨ましく思っては切なくなってた。
小学生の時に初めて遥くんと女の子が一緒に手を繋いで歩いてるのを見た時は自分の事じゃないのに何だか恥ずかしくて、ドキドキとズキズキが混ざった様な感覚だった。
中学生になって『彼女だよ』と女の子を紹介された時はただ悲しくて、辛くて、一人で泣いた。
それから何度か遥くんの彼女を見たけど、切なくて、苦しくて、
皆私よりも大人で可愛くて綺麗で、優しくて素敵な人で…、
心が押し潰されそうになった。
だけど、『依良』って遥くんが優しく、甘く笑って私の名前を呼んでくれるから。
誰よりも優しい、大好きな笑顔を向けてくれるから。
幼馴染みでも、それでもいいって思えたんだ。



