インナモラート 【完】




頭が、真っ白だった。


遥くんに婚約者が居るなんて知らなかった。



皐月さんは、遥くんの婚約者なんだ…。



だから、パーティーの時、二人で行ってしまったんだ。






遥くん、婚約者いるんだ。








遥くん、結婚するんだ。








「…………っ」





涙が溢れてしまいそうだ。






「遥くん…」



「依良…?」




“婚約おめでとう”って、言ってあげないといけないのに。


さっきみたいに笑顔で、「おめでとう」って……。




「…………っ」



涙が目の縁まで込み上げた時だった。




「依良!」




凄い勢いで、廊下から絢人が私の所まで走ってきたのは。