「綺麗ー…、」
青白い満月はどこか影を感じるのに、とても綺麗だ。
「だから言ったでしょ、“綺麗だね、依良”って」
意地悪な口調なのにとびきり甘い笑みを浮かべる絢人に不覚にもドキッとしてしまった。
月明かりに照らされてる絢人が、いつもより格好良く見えたのは夜景に満月という、この雰囲気のせいなのかな?
もちろん遥くんが一番格好良いけれど。
でもこの時は、遥くんの事は頭になかった。
皐月さんとどこかへ行ってしまった遥くんを考えない様にしていたのか、絢人が忘れさせていたのか、わからないけれど。
「意地悪言わないで」
ドキッとしてしまった事が恥ずかしくて顔を背ければツンツンと絢人が人差し指で私の頬を突つく。
「怒んなよ、依良も綺麗だよ?」
「………っ、うるさい」
クスクスと笑う絢人の声が聞こえる。
「かーわい」
「ふん、」
ツンツンと頬を突つきながら、片手は手すりに置き頬杖をついている絢人は楽しそうに、嬉しそうに、甘い言葉を囁いて。
「こっち向いてよ」
今度は寂しそうに声を出すんだから厄介だ。



