「泣かないで依良、泣くほど嬉しかった?」
ひとしきり涙を拭い終わった遥くんはからかう様に言う。
「嬉しいっ…」
遥くんはただたんに、私が喜んでるだけと思ってるんだろうけど違うよ、違うんだよ遥くん。
大好きなあなたに言われたから嬉しいんだよ。
大事な所で鈍い遥くん、でもそんな所も大好き。
「うう…、遥くんも格好良いっ、誰よりも格好良いっ…」
一度引いた涙を堪えながら遥くんにそう伝える。
恥ずかしいけど、今伝えたくなったんだ。
「ありがとう、俺も嬉しい」
遥くんは本当に嬉しそうに、私を見て笑った。
私を見つめる遥くんを見つめ返す。
優しく笑う遥くんは本当に誰よりも格好良くて、
「依良?」
「遥くん…」
本当に大好きで、
遥くんが優しくするのも甘く笑うのも、こうして隣に置くのも、全部、全部私だけがいい。
なんて欲張りな事を考えた。
「遥くん……」
「依良」
見つめ合う私と遥くん。
そこには確かに普段とは違う空気が流れていて
私はつい、「好きだよ」と言ってしまいそうになった。
ううん、言ってしまいたいと、伝えたいと思った。
だけどそれが出来なかったのは、
「遥架さんっ!」
二人きりの空間に第三者の声が響いたからだ。