「遥くんっ」
「滝川さん…」
私と桜木さんがそう言ったのはほぼ同時だった。
桜木さんは遥くんを見ると私の手を離して一歩後ろに下がった。
「良いじゃないですか、ただ話でもしようと誘ってるだけなんですから」
「他の女性を誘えば良いでしょう」
「他の女性より素敵だから誘ってるんですよ」
遥くんが顔をしかめた。
二人の間にピリピリとした空気が張りつめる。
「俺が誰を誘うかは勝手でしょう?それに、彼女が良いと言えば何も問題ない」
桜木さんは私へと目線を移した。
「依良さん、どうですか?」
「えっ…あの、」
優雅な動きで手を差し伸べた桜木さんに戸惑ってしまう。
さっきは強引に手を引かれたからはっきりと離してと言えたけど、こんな風に手を差し伸べられたらどう断れば良いのかわからない。
「あちらで食事でもしながら是非お話を」
「……えっと、」
どうしよう…。オズオズとしていると私を庇う様に立っていた遥くんが桜木さんの手を払い除けた。
「お断りします」
強い瞳で桜木さんを射ぬく遥くん。



