「ねえ、少し二人で話さない?」


私に一歩近づいてそう言った彼はその整った顔立ちを武器に誘ってきた。




「すいません、人を待ってるので、」


「絢人くんでしょ?」



だけど私に整った顔立ちなんて何の意味もないぞ!
好きな人がいるんだもん、なんて思いながら断ろうとすると桜木さんは絢人の名前を出した。




「さっきまで一緒にいたんだから見てたに決まってるじゃん、だから絢人くんが居ない時に誘ったんだよ」



絢人と一緒にいる事知ってるなら何で誘ってくるの?


よくわからなくて首を傾げると桜木さんはまた笑った。





「君、すごく可愛いよね、だから少し話したいんだ。絢人くんが居たら断られるでしょ?」


「あの…」


「絢人くんが戻ってくる前にさ、早く行こう」



桜木さんはそう言うと私の腕へと手を伸ばす。



「ほら、早く行こう」


「あの、離してくださいっ…」


「少し話すだけだって」



乱暴ではない、だけど確実に彼の方へと引かれる手。

素肌に触れられた事でゾワッとした感覚が襲ってきた。





「困りますっ…」


怖いよ、絢人っ。




「話すくらいいいでしょ?」





遥くんっ…!






心の中でそう叫んだ時、パシッと誰かが私の手を掴む桜木さんの手を掴んだ。




「離してくれますか?桜木さん」




その人物は、助けを求めた相手、遥くんだった。