はきはきと話すあゆみさんの言葉には言い含んだトコロは一つもない。洋館に〝普段暮らしてる私達〝があゆみさん一家な事はちゃんと理解出来た。なのに心の奥のうじうじした部分が「もしかして修吾さんも?」と歪んだマイナス思考へと誘ってくる。

「ーーーありがとうございます」

随分遅れてしまった返事をした直後、突き当たりの部屋の前であゆみさんが足を止めた。

「ちょっと驚かせちゃうと思うけど、大丈夫だからね。ホント、全然大した事ないの。でも無理させちゃったから……。ごめんなさいね」

申し訳なさげに言った後、あゆみさんは静かに障子を開いた。

広い和室の真ん中に布団が一つ。誰かが寝ているのは分かるけれど、頭が向こう側だから顔は見えない。ただ、布団の横にひょろりと立っているのは、

「点滴、ですね」

「ええ。あ、でも中身は栄養剤?みたいなものなの。お医者様はゆっくり休養取るのを勧めたんだけど、本人がさっさと体力は回復させたいってきかないから」

「早く治して会社行かないとって思ったんですかね」

責任感が強い人だから、考えそうだ。

「私もそう思ったんだけどね、違うんですって。早く治して元気な状態で帰らないと心配させるからって」

「心配……え?」