『らしいよ!今朝、課長に家族の事情で休みますって連絡来たんだって。課長も驚いて周りに言いまくってる』

思いもよらない話にどんどん息が苦しくなる。何気ない会話をしながら、頭の中も心の中も全然冷静じゃなくて。スマホを持っていない左手で心臓をぐっと押さえて耐えた。
どうにか会話を終わらせた時はぐったりとして、しばらく起き上がれなかったほどだ。

今日も修吾さんは、いつも通りの時間にいつも通りの様子で出勤していった。用事があるともどこかへ行くとも言ってなかった。

「なのに有給?」

ポツンとこぼれた言葉は、当然ながら誰にも拾ってもらえずに転がっていく。
そのままぼんやりと過ごしていたら、随分と長時間経っていたらしい。夕日に気付いて「夕飯つくらなきゃ」と独り言と一緒に立ち上がって。

穏やかな生活が続いていると思っていたのは、頭の中がお花畑になった私だけなんだ。「本当に好きになっちゃったらどうなる?」なんてどれだけ幸せな思考回路だったんだろう。