まったく身に覚えがなくて小首をかしげると、修吾さんは心底残念そうに言った。

「レンタカーでごめん。早急に自動車の購入を検討するよ」

「え!?そんな必要ないですよ。だって今までだってなくても不都合なかったんだし」

予想外の展開に少し慌てて、早口で指摘する。

「これまでは一人だったから、な。休日に出掛けることも少なかったし、必要な時は今回の様に借りれば良かった。でも今は成美がいるし、買い物に行く機会だって増えた」

「いやいや、それは最初だけです!確かに今は生活用品とか収納とか買いたいものも多いですけど、生活が落ち着いたら買い物に行く回数だって減りますし、お出かけする時も今日みたいにレンタカーにするか、電車だって行けますし」

まさか私のために車の購入まで考えるとは、滅茶苦茶な話の展開についていけない。エリート様とはいえ一介のサラリーマンにとって自家用車購入は気軽に出来る決断じゃないはずだし、私だって自分のために数百万の金額を使わせるなんて申し訳なさ過ぎて落ち着かない。
どうにか考えを変えてもらおうと修吾さんの顔を覗き込んで、びっくりした。

「え?……あの、」

睨むように海岸を見つめている修吾さんは、この上なく悔しそうだ。