ぐっと唇を噛み締めて顔を下げていたら、小さな溜め息と一緒に暖かな掌が落ちて来た。
それはぽんぽんと髪を撫でながら、私の気持ちを落ち着けていく。

「悔しい時や自分を責めてる時に唇噛み締める癖、直した方がいい。血が出てしまう」

「そんな癖、ないです……」

「そうかな?じゃあほら、顔を上げて」

暖かな掌は私の髪を滑り降りて、そおっと頬を包むとゆっくりと上に導いた。

「成美は何も悪くないよ。俺が内緒にしてただけ。だからほら、噛み締めるのやめて」

私を見つめた修吾さんの掌は頬を包んだまま、親指が縛を解くように優しく唇に触れた。

「ーーー少し、血が滲んでしまったな」

呟いた修吾さんの唇がゆっくりと近づいてくるのを私は瞬きも忘れてじっと見ていた。